1月某日、禁漁日に入る直前のしらす漁に同行させてもらった。
まだ日の昇りきっていない淡い空の色の中、船の準備を着々と完了していく漁師の方々。しらす漁が行えるのは午前中のみで、漁の準備はもっと真っ暗な状態から始まっているらしい。 限られた時間の中で、どこにいるかわからないしらすを獲るためには、長年の経験と技術が必要だそうだ。
出港が始まると続々と船が動き出し、大船団の迫力ある風景を楽しめる。船の上から見る漁船の群れはまさに圧巻である。
漁港から沿岸部まで徐々にスピード感が増していき、他の船が立てた波を割って進む際には、大きく船が揺れる。遊覧船では味わえない揺れと波しぶきは刺激的で、これから行われる漁への期待感が増していく。
※用宗の漁場は大井川河口~安倍川河口~清水辺りがメインとなっている。
南アルプスを筆頭とした山々の恵みを河川が運び、日本一深い深度から上ってくる海洋深層水と混じり合い、豊かな漁場を形成しているそうだ。→リンク(漁場について)
魚群探知機に映る魚影を見て、長年培ってきた経験から魚群かゴミかを見極めている。ゴミを網に引っ掛けてしまうと破損の原因になる上、午前中だけの短い漁時間では致命的なミスとなるため慎重に判断している。
無線での連絡を密に行い、他の漁船と情報を交換した上で機を見計らい、ここだという場面で網を誘導し引き揚げていく。網の巻取りをしながら無駄のない動きで連携している。このスピーディーな作業により、しらすの鮮度を保つことができるのだ。
用宗のしらす漁船は二艘曳きで、運搬船を含めた3艘1組で行われ、運搬船はしらすが獲れたら即、港へ戻っていく。この入網一回で獲れたしらすの量は、カゴで約30杯と大漁。
獲れたしらすの鮮度を保つためにすぐに帰港する。
もの凄い速度で港へ急行し、水揚げからものの15分足らずで競りにかけられた。船からおろした瞬間に競りが始まり、鮮度抜群のまま出荷されていく。加工も素早く行われ、味の良さを追求していることがよくわかる。
目の前で出荷されていくしらすを見て、すぐにでもしらすが食べたくなり、漁港に併設されている「どんぶりハウス」へ直行した。欲張って生しらす丼とネギトロ丼をダブル注文してしまった。漁船に乗った後のどんぶりは、また格別の味である。
今回の乗船体験では、しらすを獲るための準備から販売まで、港一丸となって徹底したプロ意識の元、しらすを市場に流通させていると感じた。
港を中心に街が発展してきた用宗では、加工や販売等しらす漁によって支えられている住民の数はとても多い。漁師の方々、その関係者の皆さんが誇りを持って用宗を支えているその姿は、街中では見ることのできない特別な光景であった。
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