用宗港から徒歩すぐ、海風が心地よくそよぐ場所に、本好きの奥様と和菓子職人のご主人が営む甘味処「海風文庫」があります。慌ただしい日常からちょっと逃げ出したくなったら、ゆったりとした時間に浸りに来ませんか?
こだわりのお菓子は繊細で上品な味わい
調理を担当されるご主人は、ホテルマンや喫茶、バーテンダー、和菓子職人など多彩な経歴の持ち主。近年はご自身の会社経営に注力されていたそうですが、長年の夢を叶えるべく一念発起してお店をオープン。和菓子職人だった頃の感覚を取り戻すのに苦労されているようですが、それもまた楽しいとご主人。海風文庫で出会えるお菓子には、食材へのこだわりや独創性がギュッと詰まっています。
海風文庫のわらび餅は、小豆から炊き上げた自家製のこし餡入り。餡入りのわらび餅は京都発祥とのことで、静岡ではなかなかお目にかかれないのだとか。こし餡はくどさがなく、滑らかで絶妙な甘さ。たっぷりかかったきな粉の香ばしさとも相性抜群です!
赤ワインやラム酒が香るドライフルーツ入りの本練羊羹に、マスカルポーネやクリームチーズを使った濃厚クリームを添えて。羊羹の上品な甘さ、イチジクなどのドライフルーツの風味、胡桃の歯応えや香ばしさ、チーズクリームの優しい塩味などが響き合う、羊羹の概念が覆される美味しさです。
ユニークなお菓子や季節のメニューも
備長炭で炙りながらいただくお団子や、手土産にも最適な焼き小倉きんつば、昔なつかしいプリンなど、趣向を凝らした品々も要チェック。どうしたら美味しく食べてもらえるのか、研究に余念がないご主人。旬の食材を活かした、季節ならではのメニューにもご期待ください。
いろいろな本と出会える甘味処
バラエティー豊かなお菓子だけでなく、本好きの奥様がチョイスした小説などが並ぶ店内のラックにもぜひ注目を。奥様は最近の若者の本離れを憂いており、少しでも本を楽しむ人が増えて欲しいとの思いから、自宅にあったコレクションをお店に並べているそう。
「最近はみなさん、いつでもスマホでしょ? それって寂しいですよね。若い女性が喫茶店で座りながら本を読んでいる姿って、とってもかっこいいと思うので、ぜひ本を読みながらゆったりとした時間を過ごして欲しいです」
そんな奥様の想いは、客席のテーブルの上にも。『静岡県の雑学』、『昭和レトロ家電』、『お江戸ことば』など、最後まで読まなくても楽しむことができる、ユーモアあふれる本が置かれています。
「先日来店された年配のご夫婦は、昭和レトロ家電の本を眺め『懐かしいねぇ』と言葉を交わしながら楽しまれてた様子でしたよ」と奥様。海風文庫は、お菓子やお飲物が運ばれてくるまでの時間を本が埋めてくれる、素敵なお店です。
お店のインテリアは息子さん夫婦が担当、家族で作り上げた
ゆったりした時間を生みだす、落ち着いたインテリアも魅力のひとつ。お店の外にはテラス席もあり、ペット同伴での利用が可能。用宗にはワンちゃんをお散歩させている方が多いとのことで、愛犬家の方もお気軽にご来店いただけます。
海風文庫が大切にしていること
「どら焼きでもきんつばでも、作りたて、焼きたてが一番美味しい。感動的に美味しい。その感動が後世に受け継がれていくと思う。コンビニに並ぶ既製品も美味しいけれども、やっぱり作りたてにはかなわないので、ぜひ職人が作る出来立ての味を楽しんで欲しい」
海風文庫のご夫婦は、そんなふうに語ってくださいました。
本を読んだり、お話をしたり......。ゆったりとした時の流れに浸れるような、居心地の良いお店作りを目指している海風文庫。店内の雰囲気にはどこか用宗らしさが漂い、この先も自然と町に馴染んでいくことと思います。
文/写真 よれちゃん
静岡のグルメ情報:もぐもぐしずおか